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Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

十一

彼の曖昧な返事は、佃に対する母の辛辣な批評を自ら思い起させ、伸子を不安で苦しめた。彼女は、どうせ捧げた体です、と云うような佃の言葉の厭味を感ぜず、そのまま受取るほど幼稚でなかった。同時に、恐ろしくて、それを彼の偽善的な云い廻しだとも思い得ない。しかも、彼女の理性は、その返事が、非常に複雑な性質のもので、言外に、彼は養子になることを大して迷惑と感じてもいない――それどころか、或はなってもよいのに、ただ伸子の思惑を憚って、漠然とした言葉で答えたと思えなくはないことを、告げ知らす。――

伸子は、第一、母の期待通りの返事を佃がしたことが、残念であった。母は、それ見ろと、内心思わずにはいられないであろう。それ見ろと思うことは、取りも直さず、佃が、彼女の予言通り処世術に悪がしこい男で、利用するために伸子を結婚まで引きずって来た、と云う推測を承認することになる。伸子は、二人の愛のため、これは思うに堪えなかった。佃の名誉のため、自分の名誉のため、母のため、人間の心に潜む真の愛の純潔のため、伸子はどうしても、この問題は成就させまいと決心した。

たださえ人を信じ得ず、時々自分の疑惑が実現するのを見て、一種の誇りさえ抱いている多計代は、更にその裏通りの人生観を強めてしまうだろう。