Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「そうよ、だからなおさら、いいものに仕上げなくてはね」
伸子は、劬りつつ、奥から閃くもののあるのを自覚して云った。
「仕事から云えば、学校の先生よりこの方があなたの本道なんだから、云いわけをしないですむようなものに仕上げなけりゃあいけないわ」
彼らは、原稿について、暫く話した。昨日の午後、今朝と、それを読みながら感じたのだが、伸子は、それを書いたのが夫だからと云って、自分がいささかも寛大な批評者となれないのを知った。かえって、慾が加わるせいか、敏感で、気むずかしくなった。凡庸な小冊子の著者によくあるように、常套語を平気で数多く使ったり、まわりくどくて、明快な思想も感情もない文に出会うと、伸子は悲しみと腹立たしさを一緒くたに感じた。
「駄目、駄目、これはなあに?」
礼儀も何もはね飛ばした癇癪を破裂させないために、伸子は、それが下書きだということや、夫の初めての試みだということを、絶えず念頭に置く必要があった。同時に、彼女は、自身に対して疑いをもった。心の優しい人というものは、こういうことに対してこんな気持は持たないだろうか。自分が見栄坊で偏狭なせいで、かような、いわば特殊な文学的感覚の欠乏を、これほど苦にやむのだろうか。