Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
八
――伸子は坐り込んだまま、この妙な心持に沈んでいた。母は母で、両腕でしっかり自分の胸を抱き込むようにしながら、じっと前方を見据えて動かない。――
佃が立ちかけて、伸子を促した。
「じゃあ……失礼しましょうか……だいぶ夜も更けたから――」
伸子は、佃のわざと低めた声や、いかにも自分のものというように彼女を見る眼つきが、何かうるさかった。形の上では突き放されながら、却って母の心持と相通じるような、錯倒した感情が生れた。
二階を降りようとして、伸子は階子口でよろけた。佃は、痛いほど彼女の腕を捉えて支えた。
八
目を醒すと、佃は起きて、縁側にいた。秋らしい朝で、乾いた梧桐の葉が、空の高いところで鳴る音がした。伸子は、体じゅう非常にだるかった。――床から体を持ち上げるはりが抜けていた。彼女は寝たまま、高台の方の秋空を眺めた。実に澄んでいる。こんな空を、これまで見たことがあっただろうか。寝ている部屋を通して、その碧い空から、清々しい力ある九月の風が吹いて来た。無碍な、それ故、ひとしお魂にしみる哀感で、伸子は思わず眼を瞑った。
昨夜、一時頃帰って来てから今朝まで、伸子は殆ど物を云わなかった。