Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
その、せずとよい云いわけを、彼女は伸子のところに来てまで云うのだ。
「お茶ぐらいはいくらでもさし上げてよ。――きょうは一つ、菊見の真似でもしましょうか」
伸子は、縁側に、座蒲団や茶を出させた。
そして、祖母をかけさせ、自分もそばで、さも宏大な花壇でも眺めるふりをしながら、
「――さて、いい眺めじゃのう、見渡す限り千本白菊の真盛りだ」
祖母はおいしそうに深く煙草を吸い込み、さて吸殻をはたきながらくすくす笑ってからかった。
「……俺の眼がなじょになったか、菊は一本しか見えないごんだよ」
「――駄目よ、おばあさまったら。もっとあるつもりよ! もっとあるつもりよ!」
そばから、きよが、白い瀬戸ものの大きな義歯をがたつかせて、愛想笑いをした。
「奥様の面白いことをおっしゃいますこと、ほほほほ」
二言目には奥様奥様と呼ばれるたびに、伸子は、体のどこかを、鄭重に指の先で引っ張られるような、工合のわるい気がするのであった。祖母は上機嫌で、国技館の菊人形の噂をした。彼女は、やがて、足先が冷えると云って、家に上った。
「――俺も若い頃にゃあ、どんな女にもまけなかったが、こうなっては死ぬばかりだなあ――針のめど通すに縫うほどかかるごんだ」