Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
尋常に、妻の両親にも会わせて帰したいのは、自然なことであった。けれども、佃は、去年往来を絶ったまま、何の諒解もなく今日まで来ていた。祖母の、理窟ぬきに懸命な心遣いに動かされて、伸子だけ、春から、たまに出入りし始めた。歪んだ関係であった。和解のできていないところへ、だしぬけに電話一通の、しかも押しつけがましい気もしないではない前触れだけで、老人を連れて行こうとする佃の態度には、欠けているもののあるのが感じられた。
鍵の手になった縁側の彼方では、老人が背中を日に暖めながら、二人の声を無心に聴いている。伸子は云いたいことの半分も口に出しかねた。
「私に云ってからにして下さるとよかったわね……それだけじゃあすまなくてよ」
彼は、黙って伸子と眼を見合せていたが、やがて、
「まあいい」
断念したように云った。
「明日またかけて見りゃわかるでしょう」
そして、座敷へ去った。父子の話声がした。
「今日は一つ上野へ出かけましょうか」
「偉い人なこっちゃろうな、しかしいつと云うて、すいた時はあるまいから――」
老人は乾いた咳をした。
「……伸子さんはもうおいきたのか?」
「まだです……あんまり好きでないんでしょう」