Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
おいそがしいところを度々、御苦労さま」
――この取次は、伸子にとって、不意なようで不意でなかった。朝、佃から、会社へ電話をかけた事を告げられた時から、彼女は予期していた。何とか動坂から云ってくるに違いない。今日中でなければ、きっと明日。重苦しい感情を伴って、博覧会場を歩きながらも、考えていたのであった。
伸子は、
「動坂から電話がかかったんですって」
と云いながら八畳へ行って見た。老父と夫との間に、東京地図が拡がっていた。頭をさしよせて何処か郊外の部分を説明していたらしい佃は、一箇処を指で押えたまま、顔を擡げた。
「……?」
「さっき。――帰ったら直ぐかけろと云うんですって……」
彼は空々しく、何気なく答えた。
「――かけて来たらいいでしょう? それなら」
伸子はその声をきいたら、変にいやな心持になった。
老父が眼鏡をはずしながら、二人を見較べた。
「何ごとじゃろ、今頃」
「さあ……」
伸子は下駄をはきながら、佃が何とか面倒そうに一口説明し、直ぐ地図に戻って行くのを聞いた。
電話には多計代が出た。伸子が思った通りの用向きであった。
「父様がおかえりになって初めて話を伺ったようなわけでね、是非話したいことがあるから、今から来てくれないかい」