Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
伸子は電話口で当惑した。
「もうおそいし、今日は博覧会のお伴をしてくたびれているから、明日じゃあいけないかしら」
彼方では、電話の傍に父もいるらしい様子で、伸子の云うことを繰り返す母の声がした。
「それでもいいけれどね、明日私はお悔みに行くところがあるんで、都合がわるいし、金曜日と云えば――そうだったろう?――もう日もないしするから、その前に、すべき話はしてしまわないと、お前も迷惑だろうと思うから……」
「――じゃあ上りましょう……少しおそくなるけれども」
伸子は、淋しい暗い裏通りを、一跨ぎで自分の家へ戻ってきた。襖をあけると直ぐ、老人が真面目に不安そうに訊ねた。
「何事でした? 御病人か?」
伸子は、とっさの思案がつかず、
「いいえ、そうじゃありませんでしたけれど……ただいま」
彼女は軽く老人の前に手をつき、頭を下げた。そして、二人のうち、いずれへともつかず云った。
「……私、これから動坂へ行って来なければならないんだけれど……」
佃は、万事事情を承知している者の不自然な冷淡さで、
「そう」
と云った。
「そんなら、寒くないようにしていらっしゃい」
「――御苦労なこっちゃのう、今頃から……」