Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
彼の癖であった。彼はしきりに伸子の机の方へ目をやった。
「近頃なにかお書きですか」
「何にも――あなたは? おいそがしいの」
「下らないことにいつも追いまわされてね、どうも」
「翻訳――面白いものをしていらっしゃる?」
「――別に、大して面白いって云うものでもありません。……そりゃあ、ただ読んでいりゃ面白くも楽しくもあるけれど、訳さなくちゃあならないとなると、ぞっとしませんね」
彼の体格に比べると、どこやら弱い笑声を立てた。
「今、なに」
「即興詩人です……私は、あれの原本を、第一版で持っているんだが……面倒くさいんでね、独逸語のと対照してやっています……」
「あの人の自叙伝と云うの――面白いでしょうね、およみになって?」
「ああ、――何とか云うのがありましたね」
彼は傍机に、丸善の包紙のまま、一冊の本が載っているのを見つけた。
「何です、あれは」
伸子は笑った。
「目が早いのね」
雑談の末、彼は、
「どうです、家をお持ちなさると、仕事をするのがなかなか困難でしょう」
と云い出した。
「――男のひとは、どう?」
「さあ、どうだかな、私は経験がないからわかりませんね、だが――もちろん負担が殖える点はわるいが、概して落着けるらしいですね」