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Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

五

役割を演じつづけるだろう。

伸子は絶望と恐怖とで涙をこぼした。永い、しずかな、地にもぐり込みたいようにそれは悲しい涙であった。

五

英国皇儲の来遊は一般的な好意を呼び起していた。馬場先に大きな歓迎門ができた。夜はアーク燈の光で、ぞろぞろ通る人間も、お濠の松の枝ぶりも、いつもと違うように見えた。佃の老父はその賑わいを見物してから、田舎の生活に役だつ、実用的な手土産をもって帰国した。

窓をあけ放して置くと、夜気とともに、春の土のにおいや若葉の匂いが、明るい部屋に流れ込んだ。

老人が去ったあと、宵は長く感じられた。佃は、そういう夜、部屋の真中にあぐらをかいて、外国から来た書籍包みを開いていた。伸子はそばで、解きすてられた紐や紙を始末していた。界隈がしずかなので、彼女がたたむ厚い包紙の、ゴワゴワいう音ばかり耳立った。

「――あちらの机に送り状があるから、とって来てください」

伸子はそれをとって来た。彼は一旦テーブルにつみ上げた本を、一冊ずつその送り状とてらし合せ始めた。伸子はじっとその様子を見ていたが、

「――ねえ」

と声をかけた。彼女はこの呼びかけを、なみなみならぬ心持でしたのであったが、佃は手許の仕事に気をとられ、うっかりした調子で答えた。