Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
……ところで、あのお手紙は細かく拝見しましたが……何ですか……佃さんは、どこかへ……御旅行ですか」
伸子はぶきっちょうに、必要な答をした。
「ああそうですか……」
先生は安楽椅子の奥によりかかるようにし、考えながら、右手の指で軽く、既に白い髭を撫でた。
「お手紙で、実は意外に驚きましたようなわけです。御母堂は初めっからなかなか御心配で、いろいろお話もありましたが、あなたも御婦人である以上、一度は家庭の人となられるのも結構だろうと申していた次第ですが……御両親にはもうお話しですか」
「……まだでございます」
云い終るや、伸子は何とも云えない極りわるさに襲われた。彼女は、自分が答えた瞬間に、それが先生にとって案外なものであったこと、同時に、先生の心のうちで、この問題がすっかり初めの重さを失ってしまったことを、直覚したのであった。伸子は、自分のぐうたらな態度のせいで、先生が自身の親切心まで愚弄されたように感じられたら、それこそすまないと思った。彼女は謝罪するように云った。
「本当に筋違いのことで、先生に御心配おかけ申すべきことでないのは、よく承知しておりましたのですけれど……」