Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
霧が深くこめて来て、自分達が降りて来たばかりの山巓を振り返っても、もう見えなくなった。
「下は雨でしょうか」
「さあ……風があるから大丈夫だと思うが」
下りの勢いで、歩調を揃えとんとん下りてくるうちに、ポツリと顔に当るものがあった。
「……降り出してよ」
「夕立でしょう」
ポツリ、ポツリ、だんだん雨粒が繁くなって来た。伸子は赤い傘をひろげた。
高い山を覆う雨は、一町ぐらいで上と下との雨量がまるで違った。半分ばかり下りて来ると、もうその辺は大雨であった。赭土道が泥濘になっていた。雷が鳴り、笹の中から亡霊的に突立っている白い死木に稲妻がひろく閃く。伸子はぞっとした。
「この方が早く歩けていい」
佃は伸子の腕を自分の腕にかけさせた。
「もうじきだから、大丸で雨やどりして行きましょうね」
伸子の紅い日傘など、何の役にも立たなかった。透綾の着物が肌まで濡れ徹った。水を吸い込んだ草履が重くふやけ、ビシャッ、ビシャッと、伸子の足の下で泥を跳ね上げた。
「やまなくてよ、これは――雲がどこも切れていないんですもの――本当に、ちょっと大丸によって行きましょう」
「…………」
佃は歩調を速めた。