Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
佃そっくりの横顔を持った男は、もうその辺に見えなかった。
伸子が帰って間もなく、二日休みの日があった。
伸子は、縁側に座蒲団を持ち出していた。秋晴であった。つくばいの横に、先住の人の置いて行った薔薇が、小さい鮭肉色の花を、二輪つけていた。薔薇の木の後は古い竹垣で、その裏に、更に古びた隣家の羽目が高く見えた。羽目は黒いが、永年の風雨に荒廃し、黒さも薄墨色にぼんやりしたところへ、緑っぽく細かい黴が、蛾の翅の粉を撒いたように滲みついていた。その背景の地色の前に黄がかった二輪の薔薇は、鮮かに美しく見えた。艶ある濃い臙脂の繊い枝の線、夜の霧に蝕まれはじめた葉の色。荒廃した黒い羽目に、これより優れた飾りはなく、秋の薔薇の花にとってもこの調和に優る周囲はないと、思われた。
伸子は、快感をもって一隅の詩情を味った。世の中の美しい人達は、なぜこのような裾模様を着ようと、思いつかないのであろう。立派な衣裳と云うのは、このように、計らず印象にのこされる自然の完成した美を、とり入れたものではあるまいか。
すると、その時、あちら向きになって、一本の松の樹の下を掃いていた佃が、伸子の方を顧みた。