Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

六

彼女はもう一遍事実を確めるように窓から外を覗いた。たった一二分で、こうも光景が変るものか! いつの間にか、ホテルの正面入口に大きな米国国旗がつり上げられた。向い側の薬種屋でも、或はその上にずらりと並んだ窓々からも、一斉に大小の国旗が今はもうじっとしていられないと云う風に、ヒラヒラ情に迫ってはためき出した。汽笛の音は益々入り乱れ、高まった。伸子は感動から泣きたいようになった。街上を夥しい自動車が、ことごとく国旗を吹き流し、人間を満載し、下街へ! 下街へ! 先を争って疾走した。パン! パンパン! その間に爆竹が鳴った。

伸子は長椅子に腰を下した。

それにしても本当に血腥い殺人仕事は、これで永久に終ったのだろうか?

伸子は本気にされないような、わくわく切ない心持でまた立ち上った。彼女は出そうとしていた手紙を卓上に忘れたまま亢奮して部屋を出た。往来へ、往来へ!

六

昇降機の扉が開くのを待ちかねて乗り込んだ伸子とすれ違いに、黒い外套を着た背の高い男が、これも気ぜわしそうに片脚廊下に踏み出した。が、入って来た伸子を見ると、

「や」

と立ち止り昇降機へ後ずさりした。