Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
彼女はちょっと耳をそばだてて見た。自分の部屋だけ残して、周囲が消え失せたような静けさだ。伸子は、不安に襲われた。体で椅子を押しのけ、立って隣りの唐紙をあけた。スタンドが灯っていた。寝台の蒲団は、内に横わっている人間の体なりにもり上っている。何の変りもない。――伸子は、何のためにそんな不安に掴まれたか、おかしくなった。寝台の裾の方の壁に、大きい自分の影法師を映しながら、伸子は部屋に入った。が、夫の様子を見ると、言葉がふさがれた。
彼が聖書を読む――どういう心からであろうと、それをとやかくいう権利が自分にないのは、伸子にわかっていた。明るく読もうと、感傷をそそるように読もうと。しかし、世の中には、神経にこたえるやりかたと云うものがある。例えば同じ物を食うにしても、見ていると腹が立って来るような食いかたというのがある。この聖書で、佃は、何を自分に思い知らそうとするのか。
伸子は、佃の顔を見下した。彼は、伸子に見下されていることも、その視線には、足踏みするように強い感情がこもっていることも恐らく感じているのに、睫毛一本動かさなかった。強情な凝視を足下の壁から離さない。