Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
三
しかし、伸子には努力して出て来たところへ再び舞い戻らない信念はあった。蛇はどんなに傷いてももう去年のぬけ殻へ、二度と入って行くことはできない。……
三
年がかわった。
四月に入ってから、ある日、伸子は楢崎の書斎でしゃべっていた。書斎の窓から田端の高台が見晴された。数日来風が強く、やっとその日和いだ日光と風景であった。
「眺めが変ったことね、この前上った時分から見ると――」
「そうでしょうとも、もうすっかり春ですよ」
佐保子は正面の椅子から立ち上った。そして伸子に横顔を向け、硝子の外を覗いた。
「木蓮どうしちゃったかしら――この間じゅう、あちらの部屋に坐っているとそれは綺麗でしたよ、早く来れば見られたのに」
束ね髪だが、こめかみのところで鬢の毛が張り出し、古典的な横顔に美しい趣を添えていた。ややあり、伸子が云った。
「――でもあなたは一種の力をもっていらっしゃるのね」
「ほ、ほ、ほ」
佐保子は特徴ある笑声を立てながら、また元の場所へ戻って来た。
「大変なことになったのね」
「でも、そう思うわ、とにかくあなたのところへは、ぐうたらな気持のまんまでは上れないようなところがあるわ」