Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
――人間というものは一つ得るためには何か他の一つを犠牲にしなければならないものなのね」
佐保子は、その頃ロシアの貴族出身で、十九世紀末欧州で最も尊敬された女流数学者、並に作家であったある女性の伝記を翻訳していた。
「どうなすって、翻訳――おすみになって?」
「ああ、もうじき出ますよ、出たら是非読んで下さい。私がソーニヤを愛さずにいられないわけがわかりますよ。本当に我らの女性という気がしてよ」
扉をノックする音がした。
「はい、お入り」
若い女中が、伸子に挨拶し、取次いだ。
「吉見さんがいらっしゃいました」
「まあ」
佐保子は椅子の上で体を揺るようにし、伸子を顧みた。
「珍しい人が見えたこと、今日はいい日ね、好きなお客さんばかりあって。――伸子さん、かまわないでしょう?」
「――――」
吉見という人が女か男かさえ見当つかず、伸子はぼんやり、
「どうぞ」
といった。
「じゃあ、こちらへ。そしておいしくお茶を入れて来て下さい」
女中が扉をしめて去ると、佐保子は、やや蒼白い皮膚の下から悦びが照り出すような表情で、伸子に説明した。
「私の古い古いお友達なのよ、一寸変ったところがあるけれども、それは心が清い人、率直で。