Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
と、ぶっきら棒に答えた。ぼんやりと主婦がいなくなることを知った女中が、教育のある物わかりのよい女であったに拘らず、何だか落着かなそうに、心の不安を隠して働いているのも伸子には辛かった。一つの家庭が潰れようとする前の圧迫的な解体的な雰囲気。――
愈々明日立つ筈という前日、伸子は十時ごろ目を覚した。彼女は床の上に起きなおったまま、暫く空になっているもう一つの床や硝子から見える狭い庭、竹垣などを眺めていた。隣りの細君がその言葉だけはっきり、
「またこの頃じゃ小紋流行ですね」
としゃべっている、高い粗野な声、朝の畳のひっそりした感触などが、異様に鮮かな重みをもって伸子の心に写った。すべて見馴れているものだ。すべてを最後に見るという気がした。この畳の上で朝目を覚した時「ああまだここにいるのか」と云い難い苦悩を感じたのは幾度であったろう。生活は不思議なものだと伸子は思った。そこが自分の苦しんだところだというばかりに、先ず家からさえ去り難い思いをさせられる。何でもない竹垣の根元の万年青などが印象の真正面に立った。――伸子は、夫のいない時、一人静かに家を出て行くつもりなのであった。