Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「いつお帰りになったの」
彼女は、寝台の端に腰かけて父の手をとった。
「もう三十分ばかり前に帰って来たのさ。急に。――どうも気分がわるい。――ひどく頭痛がするし熱があるらしい」
「どれ」
伸子は、父の額に触って見た。かなり熱かった。
「寒気がなさる?」
「正金にいると、どうもぞくぞくするんでね、こいつは怪しいと、いそいで自動車で帰って来たのさ」
佐々は、言葉をきり、自分の容体を熟考するような顔をした。彼はやがて強いて冗談にまぎらすような調子で独言した。
「感冒かな――到頭とりつかれたかな」
伸子は、心の中が冷えるように覚えた。彼女も父の声を寝室に聞いた瞬間それを思い、ぞっとしたのであった。秋から流行している悪性の感冒は未だ猖獗していた。多くの流行病は、終りに近いほど病毒が軽微になる筈なのに、今年の感冒は逆であった。沢山の新患者に沢山の死亡者があった。一生懸命な泰然さで、伸子は、
「そうかも知れないわ。でも早く気がおつきになったから大丈夫よ。――気をしっかり!」
そして、急に母親になったような確乎とした快活さで、
「私はいい看護婦だから安心してまかせていらっしゃい」