Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
九
と云いながら、手早く外の支度を脱いだ。
佐々は伸子の帰るのを待ち切っていたらしく、彼女が外套をぬぎに次の間へ行き、やがて戻って手を洗う、その一挙一動を目で追った。
「そこにあったのか、私はまた大きいトランクの方かと思って探したが見つからなかった」
などと云いながら、彼は自分から寝衣をくつろげ伸子に検温器を腋に挾ませた。
三十八度九分あった。
「どのくらいあるかい」
伸子は検温器を振って水銀を下してしまった。
「――大したこともないわ……口がお乾きになるようだったらアイスウォータ云いましょうか」
暫くして伸子は云った。
「沢村さんに来て貰いましょう。ね」
「……よかろう」
佐々は伸子の顔を見るまでは気を張っていたらしい。心がゆるむと口を利くのも大儀そうであった。二つ重ねた羽根枕の上にほてった顔をのせ、時々太い息をついた。
医師が来るまで小一時間病人と二人ぎりで、伸子は名状し難い孤立感を覚えた。この大都会の生活と自分達の生存とはいざとなると何と無関係なことか。周囲の冷然とした感じが伸子の心にこたえた。
九
佐々の病気は、伸子も見当をつけた通り目下流行の悪性感冒の初期という診断であった。