Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
彼らは、だんだん侘しく感じながら、ほとんど一軒ごとに薄暗い家の入口を覗いて進んだ。大抵いやになった時分、彼らの前に、一つ明るく灯かげの洩れる弓形窓が現れた。カーテンの隙から、内部にちらつく男の立姿や文句の判らない話声が聞えて来る。――
伸子は、父の腕を引いた。
「ここよ!」
佐々は、外廻りを一通り眺め、入口の段を昇った。呼鈴を押した。短い、余韻のない音が直ぐ、扉の彼方で鳴った。伸子は、期待と好奇心を感じた。暗い横通りで変な不安に襲われて来たところなので、彼女にはこの古くさい板硝子のはまった扉の一重彼方が何かの暖かさ楽しさを持っていそうに思われたのであった。すぐ硝子に人影がさした。樫扉は内側に案外滑らかに開いた。扉をあけた男は、彼らを見ると更に入口を広くあけ、改った口調で挨拶した。
「よくいらっしゃって下さいました。――どうぞ……」
佐々は玄関の間に入るとすぐ外套を脱ぎはじめた。伸子は自分の周囲を見廻した。右の壁際に鏡つきの高い帽子掛があった。左側には、葡萄葉の厚肉浮彫のあるベンチが置かれ、その前から二階へ登る緩い階段が見上げられる。奥に重いカーテンで人目を遮った開け放しの室があった。