Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女は、

「ね」

と呼びかけた。佃は顔をもたげた。

「何ですか」

「今のような場合ね、はっきりあなたの心持を云って下さる方がいいのよ、相談なんだから」

「あなたのいいと思うようになさいと云ってはいけなかったんですか」

「そうじゃあないけど……何だかあれじゃさっぱりしないじゃないの。口では好きにしろと云って、様子でとても好きになんぞされないようになさるのなんかいけないと思うわ。――相談する以上あなたの心持を立てるつもりなんですもの」

佃は、黙っていたが白眼勝ちの視線で斜めに伸子を見上げ、愁訴するように云った。

「私に行くなという権利のないのは知っていらっしゃるでしょう?」

伸子が涙ぐんで沈黙していると、彼は急に焦立ち熱したように低い早口で呟いた。

「いらっしゃればいいですよ、いらっしゃればいいですよ。決して私のことなんぞ心配して下さらなくていいのです」

「行きたいから云っているのじゃないのよ。――これからだって度々あることだから……」

云いかけたところへ、五六人学生が入って来た。がら空きであった前や後の大机に、各々彼らの座を占めた。伸子は勢い、口を噤まなければならないことになった。