Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
それでも習慣で、十時過にアヴェレー・ホオルへ行った。そして、いつもの定りのテーブルに向って坐って見ると、伸子は、何とも言えず物足りなさを、身のまわりに感じた。爽やかな空気の一種の冷たさ、人の跫音のしない建物全体の、広すぎるがらんとした感じ、空虚なとはこういう感じか。伸子はその辺にあるすべてのものを、異様に新しく、強く感じて見た。
入口の扉が開いたり、近よる人の気勢がしたりすると、彼女の神経は極度に緊張した。
佃は今数百哩離れたところにいて、もう二日は帰って来ない。その事実はよくよく分っているにかかわらず、若しや、という心持が、その瞬間、彼女の動悸を高めるのであった。午前中が一日の永さであった。しまいに、伸子は、自分の心が、あまり自由を失っているので、情なく苦しくなった。
彼女は図書館を出た。ハドソン河ぞいの公園を散歩したり、ブロウドウエイで買物をしたりした。そして、どうやら夜になったのだ。……
伸子は、自分の心持と戦い、一時間の種になるだけの竹取物語を、やっと写すと、いそいで帳面や字引を片よせた。さもいいことでも待っているように、勢いこんで机から立ち上った。