Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme

Aozora Bunko

浅ましの光景に名香は燃え尽きた

「お園」

差し延べる丈太郎の双腕の中へ、お園は無言のまま、その華奢な体を投げかけました。

「お園」

美しさも、香ばしさも、在りし日のお園と変りません、温かい唇も、軟かい頬も、其の儘のお園が、蘇生って丈太郎の腕の中に、思いもよらぬ艶かしい媚態を尽すのです。

こればかりは、純情なお園に無かった事ですが、歓喜に夢中になって丈太郎の心は、そんな事に気の付く余裕もありません。

「お園、お園」

「…………」

物を言わない代りに、その唇は限りなく微笑み、その眼は今までのお園には見た事もない、情熱に燃えました。

果てしも無い抱擁が幾刻続いた事か、――ひたり切った法悦が、薄れて行く香の匂いと共に醒めると、自分の腕の中のお園は何時の間にやら失せて、眼前数尺のところに、墨染の衣の袖をかき合せた醜い尼が、殊勝らしく香爐を護って居ります。

丈太郎は恥かしさに穴にも入り度い心持でした、我にもあらず前褄を掻き合せて俯向くと、尼は静かに立ち上って、

「それでは又参ります、御免下さいまし」

意味あり気な言葉を残して立ち去りました。

浅ましの光景に名香は燃え尽きた

それから幾日かの間、不思議な尼法師は毎日丈太郎の寮を訪ねました。