Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
差掛屋根の直ぐ下には、エレベーターがある筈ですが、これは十一時に運転を中止して、エレベーター・ボーイはさっさと引き揚げますから、差掛屋根の鉄の扉を叩いた位では、誰も地下室の小使部屋まで報告してくれる筈もなく、第一この八階の数十室に、今頃まで踏み止まって居る者は一人もある筈は無かったのです。
そうかと言って、胸壁に乗り出して、九十尺下の往来を通る人に、救いを求めることなどは思いもよりません。喉の割れそうな大きな声を出したら、深夜のことでもあり、一人や二人気が付いてくれる人もあるでしょうが、気違い扱いにされたり警察沙汰になったりしては、若い婦人と一緒なだけ、恥を天下に曝すようなものです。
二人は無言のうちに、お互の心持を呑み込んで居りました。何方から誘うともなく、地獄の門のように鎖された鉄の扉を離れて、屋上に作られた、ささやかな温室の方へ歩を移しました。
「何うしたものでしょう」
「仕方がありませんワ」
思いの外蟠りの無い女の言葉は、それでも私の心持を軽くしてくれます。
温室の扉には、幸い締りがありません。二人は兎に角其処へ入って、電灯を点けて、有り合せの木造の台の上に押し並びました。