Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
「あいよあいよ妾が書いたのさ」
「なんで?」と金兵衛は怪訝そうにした。
「ああさ、大物を手に入れるためにさ」
「大物? へーい。どなたのことで?」
「徳大寺大納言公城様さ」
「え?」
「そうなのさ!」
「そいつア本当で?」
「どうだい細工は?」
「りゅうりゅうですなあ」で、二人は寄り添ったが、互いにひそひそとささやき合った。とお粂が声を上げた。
「……といったようなやり口で、徳大寺様のご注意を引いて、わざとお声をかけさせて、そうしてお心を引き付けて、妾というものを植えつけたのさ」
「そうした結果というものが……」
「出入りを許す、訪ねて参れ! というところへまで漕ぎつけたのさ」
「姐ご、明日にもお訪ねしましょう」ここで金兵衛は嘆息を洩らした。「いろいろの芸当を持っているので、姐ごは全く幸せだよ」
「さあ帰ろうよ」
「お供しましょう」
依然として四辺は月の光と、紗のような霞の世界とであったが、そういう世界を分けるようにして、お粂と金兵衛とが立ち去った時に、木蓮の花の咲いている、一軒のお長屋の窓の扉が、――その時まで細目に開いていたが、この時一杯に押しあけられて、主人の矢柄源兵衛の顔が、戸外へ黒く突き出された。