Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
露路や裏手や物の蔭などへ、素早く姿をかくしたのであろう。で、ひとしきり静かとなって、人の姿は見えなくなった。が、一つの人影はあった。
「これはこうしてはいられない。代官松の連中が、水戸様石置き場の空屋敷を襲って、兄上に危害を加えようとしている。急いで走って行ってお知らせしなければならない」
その人影こそは他でもない、友吉をはじめとして四人の男を、代官町の露路から、ここまで後をつけて来て、四人の話を断片的にではあったが、耳にした山県小次郎であった。
「何が幸いになるかしれない。家を出て彷徨っていたばかりに、兄上の一大事を知ることができた! ……焼き討ち! 恐ろしい話! ……お知らせしよう! 近道はどっちだ! ……ああ間にあってくれればよいが! ……だが老人とは何者であろう? いやそんなことはどうでもよい! ……この屋敷は? どうでもよい! ……北条美作が承知だという! あぶないあぶない、いよいよあぶない! 女煙術師? その相棒? そんな人間はどうで……もよい! 危険だ危険だ兄上が危険だ!」考えがグルグル渦を巻く。
が、取る道は一つしかなかった。焼き討ちのはじまらないその以前に、水戸様石置き場の空屋敷へ行って、危険の迫っているということを兄に知らせるよりほかにはなかった。