Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

風がひとしきり吹き渡った、と、その風に誘われて空のほうから月光を縫って、無数に落ちて来る細いものがあった。広大な屋敷の土塀の裏に生い繁っている樹々の葉のうち、秋の季節にしおれた葉がもろくも散って来たのであった、嘉門の頸へも散りかかり背へも散りかかり嘉門の肩へも散りかかった。そして嘉門のうずくまっているその正面の往来へも散り落ちて小黒い点をこしらえた。と、その点が動き出した、落ち葉が風にあおられたからであろうが、それとても、ひとしきりでたまった落ち葉が静まった、風が吹き止んだからであろう、しかし再び落ち葉が動いて一身に体を躍り上がらせ、一めぐりぐるぐるとめぐったのは旋風が吹いて来たからであろう、と渦まいた落ち葉であったか、嘉門の顔へ襲いかかった、風がそのほうへ吹いたからであろう、にわかに嘉門は顔を上げたが、

「寒い!」とつぶやくと膝を抱いたまま両方の手をふところへ入れた。

「なんだ?」嘉門はまたもつぶやいた。同時にふところから手を抜いたが、白いものが両手にもたれていた。「巻き奉書と綴じ紙だなア」――で無心に膝の前の地面の上へ二品を置いて嘉門はボンヤリと眺めやった。