Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
私は毎朝同室の医者と政治家とに交々結んでもらったものである。それから日に日に新らしい事物に出会う応接と、その船には九人の画家が乗り合せた関係上なかなか以て語学の勉強どころの騒ぎではなかった。とうとうマルセイユへ到着するまで、読本巻の一は、カバンの底へ組敷れたまま、印度洋の湿気でベトベトになって巴里の下宿屋の三階で初めて現れた。
さような不勉強から、折角習ったフランス語も船中で全く奇麗に忘却してしまって、上陸の際はぐっともすっともいえない上に勿論何をいわれても一切聞えなかった。
危ない電車道を数人のめくらがにこにこと笑いながら横切るのを、よく見かける如く、われわれは手を引き合って、無言のまま、にこにこと巴里へ到着してしまったものだった。
言葉を知らないものにとっては、初めのうちは世界の都、巴里も、高野の奥の院位いの淋しさであった。カフェーやレストウランで、大勢が何かやっているが、自分には何の影響もない事だった。毎朝新聞屋の呼声がするが、それも何の影響もなかった。もしその記事の中に明日、巴里にいる日本人を皆死刑に処すと記されてあっても、少しく驚かない訳だ。