Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
そして甥が呼びに来ても、嫂が迎えに来ても、疲れて眠ったような振りを、装っていました。
「慣れぬ山道なんぞ歩くけえ、また風邪でもブリ返したんじゃなえのかな?」
と兄がはいって来て、心配そうに枕許に坐り込みましたが、夜着を被ってなんにも私がいいませんから、やがて所在なさそうに行ってしまいました。しかも眼を閉じていても、頭がかっかとほてって、とても眠れるものではありません。
うとうとすると、経帷子に数珠を手にした死装束の母が、朦朧と枕許に現れて……全身にビッショリと、汗をかいてしまいました。茶の間も下男下女部屋も、家内の人声が途絶えて、朝の早い山里は、もうみんな、寝静まってしまったのでしょうか。仄暗い天井の節穴をみつめながら、その夜一晩、どんなに床上に転々して、まんじりともせず長い夜を、苦しみ抜いたか知れません。
ちょっとまどろめばたちまち刑事の一隊に踏み込まれて、兄や嫂が数珠つなぎにうなだれて行くまぼろしに脅やかされました。初めの予定では、ともかく兄の様子を見守って、落ち着いて篤りと考えてみるつもりでしたが、まんじりともせず懊悩し切った頭には、もうそういう冷静な思考力や判断力なぞは、ことごとく失せてしまいました。