Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
三
そして駈けて駈けて夢中で駈け抜けてやっと遠くに逗子の町の灯を見、田浦逗子間を走る汽車の汽笛の音を遥かに聞いた頃、やっと息切れがして私は足を緩めた。ビッショリと汗を掻いたその掻いた汗の中から、また冷たいものがたらたらと脇の下から脾腹へかけて伝わってきた。そしてこの時ほど私は人家の灯を恋しく思ったことはなかった。
三
翌る朝であった。奥歯に物の挟まったような、悪夢に魘されているような、言いようのない寝苦しい気持で私は眼を醒ましたが、ちょうどそこへひとしきり朝の野良仕事を終って早昼食に戻って来た亭主が、野良着のままで通りかかったが、寝起きの眩しそうな眼をして縁側で日向ぼっこをしている私を見ると、
「お眼醒めでございますか? 旦那様」
と明け放した木戸から用ありげにはいって来た。そして時も時、思いも寄らぬことを言い出してきたのであった。
「旦那様、まことにつかぬことを伺うようでございますが……」と遠慮しいしい何か恐ろしい物にでも触れるかのように怯ず怯ずと言い出してきた。「こないだの晩、旦那様は了雲寺のお話をしておいででございましたが、あの時のお話では大変綺麗な坊っちゃんが女中さんやお爺さんたちと一緒に日野様のお墓詣りをしていらっしゃったとかいうようなお話で……」