Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
左近将監は、四十いくつのふんべつざかりの城代家老ともあろうものが、あいてがまだ子どもであることもわすれて、苦戦におちいると、頭からポッポと湯気をたちのぼらせはじめました。
顔はまっかにもえて、目が血ばしって、もちまえの癇癖をこらえてうなりながら、さっきからじいっとくちびるをかんで盤面をにらみつけているのです。
陽はとっぷりとくれて、時刻はもはや四つ亥の刻……いまの十時ごろになっていたのかもしれません。あんどんにもぼんぼりにも灯がまたたいています。そしてそばには膳部がならび、お銚子が人待ち顔にでております。
さっきから女中の藤や八重が、いくたびかようすを見にきているのですが、ふたりとも箸をとるどころではありません。そのようすにあきらめて、台所へでもひっこんでしまったのでしょう。ひっそりとして、あたりには草叢にすだく虫の声だけ、ただきこえるばかりです。
そして少年のほうもまた思惑がはずれたように、さっきとはちがって、だいぶ焦燥の色がその美しい顔にただよっています。
たてつづけに負かしてくれたら、こりていいかげんで、やめにするだろうと思いのほか、左近将監のしつこいことしつこいこと……もう一局もう一局とねだって、はてしがないのです。