Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
恐ろしき毒薬
うと思われます。
恐ろしき毒薬
八重が、お小姓街道を魂も身にそわず走っているちょうどそのころおいに、まだ奉公にきてまもないお稲という下働きの下女が、うすぐらい台所の土間で、しきりにだんなさま左近将監のおかずごしらえをしていましたが、そこへ足音もたてずにまるで陽炎か狭霧のようにしのびやかにはいってきたものがありました。
ことばもなくしずかにちかよって、せっせと働いているお稲のうしろにたたずんでいるのです。
夕闇はひろい台所のなかいっぱいにただよっていますし、かまどの下では薪が炎をあげ、フツフツと大釜は煮たっていますし、せわしく鍋の中へ箸をつっこんで、煮物の味加減をみているお稲は、うしろにだれかたたずんでいるともしりません。
やがて、ふとなにげなくうしろをふりむいたとたん、ヒャーとしりもちをつかんばかりに、この山だしの下女はおどろきの声をあげました。
「まあ、おどれえた。お八重さまではねえだかね、なんておまえさま、こわい顔をしてそんなところに立ってらっしゃるだね。……ああ、おどれえた! おらはァたまげてしまいましただよ」
しかし、お八重さまとよばれた女はなにひと口もききません。