Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
こんな時に細君をたった一人で置くのが健三には何より苦しかった。彼は手を叩いて下女を呼んだ。
「ちょっと奥へ行って奥さんの傍に坐っててくれ」
「へええ」
下女は何のためだか解らないといった様子をして間の襖を締めた。健三はまた島田の方を向き直った。けれども彼の注意はむしろ老人を離れていた。腹の中で早く帰ってくれれば好いと思うので、その腹が言葉にも態度にもありありと現れた。
それでも島田は容易に立たなかった。話の接穂がなくなって、手持無沙汰で仕方なくなった時、始めて座蒲団から滑り落ちた。
「どうも御邪魔をしました。御忙がしいところを。いずれまたその内」
細君の病気については何事もいわなかった彼は、沓脱へ下りてからまた健三の方を振り向いた。
「夜分なら大抵御暇ですか」
健三は生返事をしたなり立っていた。
「実は少し御話ししたい事があるんですが」
健三は何の御用ですかとも聞き返さなかった。老人は健三の手に持った暗い灯影から、鈍い眼を光らしてまた彼を見上げた。その眼にはやっぱりどこかに隙があったら彼の懐に潜り込もうという人の悪い厭な色か動いていた。
「じゃ御免」
最後に格子を開けて外へ出た島田はこういってとうとう暗がりに消えた。