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Japanische Klassiker mit Furigana

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みちくさ

道草

夏目 漱石

Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は寒い夜の中に夜具から顔だけ出して、細君の様子をそっと眺めた。

「少し撫って遣ろうか」

起き上る事の臆劫な彼は出来るだけ口先で間に合せようとした。彼は産についての経験をただ一度しか有っていなかった。その経験も大方は忘れていた。けれども長女の生れる時には、こういう痛みが、潮の満干のように、何度も来たり去ったりしたように思えた。

「そう急に生れるもんじゃないだろうな、子供ってものは。一仕切痛んではまた一仕切治まるんだろう」

「何だか知らないけれども段々痛くなるだけですわ」

細君の態度は明らかに彼女の言葉を証拠立てた。凝と蒲団の上に落付いていられない彼女は、枕を外して右を向いたり左へ動いたりした。男の健三には手の着けようがなかった。

「産婆を呼ぼうか」

「ええ、早く」

職業柄産婆の宅には電話が掛っていたけれども、彼の家にそんな気の利いた設備のあろうはずはなかった。至急を要する場合が起るたびに、彼は何時でも掛りつけの近所の医者の所へ馳け付けるのを例にしていた。

初冬の暗い夜はまだ明け離れるのに大分間があった。彼はその人とその人の門を敲く下女の迷惑を察した。しかし夜明まで安閑と待つ勇気がなかった。