Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
「御前は呑気だね」
「貴夫こそ呑気よ」
細君は嬉しそうに自分の傍に寐ている赤ん坊の顔を見た。そうして指の先で小さい頬片を突ついて、あやし始めた。その赤ん坊はまだ人間の体裁を具えた眼鼻を有っているとはいえないほど変な顔をしていた。
「産が軽いだけあって、少し小さ過ぎるようだね」
「今に大きくなりますよ」
健三はこの小さい肉の塊りが今の細君のように大きくなる未来を想像した。それは遠い先にあった。けれども中途で命の綱が切れない限り何時か来るに相違なかった。
「人間の運命はなかなか片付かないもんだな」
細君には夫の言葉があまりに突然過ぎた。そうしてその意味が解らなかった。
「何ですって」
健三は彼女の前に同じ文句を繰り返すべく余儀なくされた。
「それがどうしたの」
「どうしもしないけれども、そうだからそうだというのさ」
「詰らないわ。他に解らない事さえいいや、好いかと思って」
細君は夫を捨ててまた自分の傍に赤ん坊を引き寄せた。健三は厭な顔もせずに書斎へ入った。
彼の心のうちには死なない細君と、丈夫な赤ん坊の外に、免職になろうとしてならずにいる兄の事があった。喘息で斃れようとしてまだ斃れずにいる姉の事があった。