Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
「飯なんか食いたくない」
細君はしばらく黙っていた。けれどもすぐ立って部屋の外へ出て行こうとはしなかった。
「あなた、どうかなすったんですか」
健三は何にも答えずに、顔を半分ほど夜具の襟に埋めていた。細君は無言のまま、そっとその手を彼の額の上に加えた。
晩になって医者が来た。ただの風邪だろうという診察を下して、水薬と頓服を呉れた。彼はそれを細君の手から飲ましてもらった。
翌日は熱がなお高くなった。医者の注意によって護謨の氷嚢を彼の頭の上に載せた細君は、蒲団の下に差し込むニッケル製の器械を下女が買ってくるまで、自分の手で落ちないようにそれを抑えていた。
魔に襲われたような気分が二、三日つづいた。健三の頭にはその間の記憶というものが殆んどない位であった。正気に帰った時、彼は平気な顔をして天井を見た。それから枕元に坐っている細君を見た。そうして急にその細君の世話になったのだという事を思い出した。しかし彼は何にもいわずにまた顔を背けてしまった。それで細君の胸には夫の心持が少しも映らなかった。
「あなたどうなすったんです」
「風邪を引いたんだって、医者がいうじゃないか」