Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
九十七
彼は帽子を被って寒い往来へ飛び出した。
九十七
人通りの少ない町を歩いている間、彼は自分の事ばかり考えた。
「御前は必竟何をしに世の中に生れて来たのだ」
彼の頭のどこかでこういう質問を彼に掛けるものがあった。彼はそれに答えたくなかった。なるべく返事を避けようとした。するとその声がなお彼を追窮し始めた。何遍でも同じ事を繰り返してやめなかった。彼は最後に叫んだ。
「分らない」
その声は忽ちせせら笑った。
「分らないのじゃあるまい。分っていても、其所へ行けないのだろう。途中で引懸っているのだろう」
「己のせいじゃない。己のせいじゃない」
健三は逃げるようにずんずん歩いた。
賑やかな通りへ来た時、迎年の支度に忙しい外界は驚異に近い新らしさを以て急に彼の眼を刺撃した。彼の気分は漸く変った。
彼は客の注意を惹くために、あらゆる手段を尽して飾り立てられた店頭を、それからそれと覗き込んで歩いた。或時は自分と全く交渉のない、珊瑚樹の根懸だの、蒔絵の櫛笄だのを、硝子越に何の意味もなく長い間眺めていた。
「暮になると世の中の人はきっと何か買うものかしら」
少なくとも彼自身は何にも買わなかった。