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Japanische Klassiker mit Furigana

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みちくさ

道草

夏目 漱石

Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme

Aozora Bunko

彼はまたその人に連れられて、よく船に乗った。船にはきっと腰蓑を着けた船頭がいて網を打った。いなだの鰡だのが水際まで来て跳ね躍る様が小さな彼の眼に白金のような光を与えた。船頭は時々一里も二里も沖へ漕いで行って、海というものまで捕った。そういう場合には高い波が来て舟を揺り動かすので、彼の頭はすぐ重くなった。そうして舟の中へ寐てしまう事が多かった。彼の最も面白がったのは河豚の網にかかった時であった。彼は杉箸で河豚の腹をかんから太鼓のように叩いて、その膨れたり怒ったりする様子を見て楽しんだ。……

吉田と会見した後の健三の胸には、ふとこうした幼時の記憶が続々湧いて来る事があった。凡てそれらの記憶は、断片的な割に鮮明に彼の心に映るものばかりであった。そうして断片的ではあるが、どれもこれも決してその人と引き離す事は出来なかった。零砕の事実を手繰り寄せれば寄せるほど、種が無尽蔵にあるように見えた時、またその無尽蔵にある種の各自のうちには必ず帽子を披らない男の姿が織り込まれているという事を発見した時、彼は苦しんだ。

「こんな光景をよく覚えているくせに、何故自分の有っていたその頃の心が思い出せないのだろう」