Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
その女は昔し芸者をしていた頃人を殺した罪で、二十年余も牢屋の中で暗い月日を送った後、漸と世の中へ顔を出す事が出来るようになったのである。
「さぞ辛いだろう」
容色を生命とする女の身になったら、殆んど堪えられない淋しみが其所にあるに違ないと健三は考えた。しかしいくらでも春が永く自分の前に続いているとしか思わない伴の青年には、彼の言葉が何ほどの効果にもならなかった。この青年はまだ二十三、四であった。彼は始めて自分と青年との距離を悟って驚ろいた。
「そういう自分もやっぱりこの芸者と同じ事なのだ」
彼は腹の中で自分と自分にこういい渡した。若い時から白髪の生えたがる性質の彼の頭には、気のせいか近頃めっきり白い筋が増して来た。自分はまだまだと思っているうちに、十年は何時の間にか過ぎた。
「しかし他事じゃないね君。その実僕も青春時代を全く牢獄の裡で暮したのだから」
青年は驚ろいた顔をした。
「牢獄とは何です」
「学校さ、それから図書館さ。考えると両方ともまあ牢獄のようなものだね」
青年は答えなかった。
「しかし僕がもし長い間の牢獄生活をつづけなければ、今日の僕は決して世の中に存在していないんだから仕方がない」