Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.725 Zeichen · 298 Bildschirme
一〇
「あの娘の毒に中てられた苦しみようが、一番ひどかったが、他の人とはどこか調子が違っていはしませんでしたか」
「そう言えば――」
二人の声は次第に小さくなります。
四方を籠めて、次第に濃くなる闇の色、その中に何やら蠢くのは、隣室から二人の話を立ち聴く人の影でしょう。
「太い女だ、三年この方目をかけてやった恩も忘れて」
と又左衛門、腹立ち紛れにツイ声が高くなります。
「今騒いじゃ何にもなりません。あの女は雑魚だが、外に居るのが大物です――。それもあと一刻の命でしょう――、今頃は捕方同心の手の者が百人ばかり、もう八丁堀から繰り出した頃――もう袋の中の鼠も同様」
平次の声は、潜めながら妙に力が籠って、部屋の外まで、かすかながら聴き取れます。
一〇
間もなく田代屋を抜け出した一人の女――小風呂敷を胸に抱いて後前を見廻しながら水道端の宵闇を関口の方へ急ぎます。
大日坂の下まで来ると、足を停めて、一応四方を見廻しましたが、砂利屋が建て捨てた物置小屋の後ろへ廻ると、節穴だらけな羽目板へ拳を当てて、二つ三つ妙な調子に叩きました。
「誰だ?」
中からは錆のある男の声。
「兄さん、私」