Japanische Klassiker mit Furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme
そのとき戸泉さんの頭の中にふっと私のことが浮かんだのだそうである。
何か月か前に戸泉さんが私を見舞いに来て、何がいちばん欲しいかとたずねたことがある。
「時間」
と私は答えた。
「時間? それはお見舞いに持って来られませんね」
「それでも、私から奪わないことはできましょう」
「おやおや、追い立てられるようだ。──物質のうちで欲しいものを言ってください」
「コーヒー。ほんものの」
そんな会話を交わしたのだった。そのころ私は新聞でコーヒーの広告を見て、さっそく下関市に注文したら、送ってきたのが、なんとハブ草の実を黒くいり上げて粉にひいたものらしかった。それでも色と苦さだけはコーヒーに似ておらぬでもなかったから、それに耳かき一ぱいのカフェインをまぜて時々用いていたのである。カフェインをいれすぎると胸のやける代用品だった。私は心臓が弱っていたので、コーヒーは薬としても体が要求しているのであった。
戸泉さんは私と、代用コーヒーを思い出して、つい、
「このコーヒーを永井さんに飲ませたらな──」と独語した。耳さとく船長が聞きつけて
「何?」
とたずねた。戸泉さんは手短に病床の私について説明した。