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Japanische Klassiker mit Furigana

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ロザリオのくさり

ロザリオの鎖

永井 隆

Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

山の家は六キロばかり離れていたが、山の家の土間に入って子供の無事な顔を見るまでは、なんとなしの不安にせき立てられて、傷つける身の足の運びののろさが腹立たしかった。二人の子は三角巾で頭を包み手を巻き、看護婦さんに助けられつつ入ってきた異形の私を一目見ると逃げ出そうとした。手から放たれたせみが、ジイーと高く鳴いて戸口から飛び去ったことにさえ気がつかず、おどおどと後すざりしながら私を見つめていた。

「これは我が子だ」──と私はその時はっきり感じた。あとにも先にもその時ほど強く親子の感じを抱いたことはない。もちろんそれまでも父と子との感情や愛情はあった。しかし男親は自分の腹を痛めておらぬだけに、女親ほどにまで強く深く、精神的に止まらず、肉体感情をもってこの子の親は私だ、とは感じないものである。ところが、その日は、この二人の子の母親が亡くなり、私は父としてのみでなく、母としての仕事もする気持ちになっていたから、しんの底から、「私はこの子の親だ」と感じたのであったろう。妻の霊が乗り移った、という考え方はまちがっているが、その気持ちはそのとき理解できた。私は、もし妻が生きていたらこの場合どうするだろうか、といつも考えながら二人の子を育てようと思った。