Japanische Klassiker mit Furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme
話はそれからそれへとはずんでお昼になった。台所でばあさんが食事の用意をしている。さて今朝もらった塩魚をこの遠くから来られたお客に差し上げたものか? それとも出さずにおいて晩に私と子供とで食べるか?
池田氏はしきりにズルチンの話をしかける。私はそれに何かいいかげんな返事をしながら一ぴきしかないくろだいの塩物を出すか出さぬかでさっきから迷っている。あのくろだいは今私の家にある物のうちの一番よいごちそうである、いや近ごろこの焼け跡のどの家でもこんな魚は手に入れたことがあるまい、遠来の珍客に出さねばならぬ、しかし、出したら後がない、私も食えぬ幼児に久しぶりに魚を食わせようと思っていたのに、子供の喜ぶ声も聞かれぬ。
台所の障子が少しあいた。横目を使ってみると、ばあさんが問題のくろだいを右手に差し上げて目くばせをして私にたずねている。私はこっそり首を横に振った。
やがて何もございませんが……と言いながら、ばあさんが貧しい野菜料理を並べた、私もなにしろ焼け跡で万事不自由なものですからと嘘をついた。けれども池田氏夫妻は心から喜んで食べてくださった上、こんな野原で清貧な生活をなさっているのには感心しました、とさえ言った。