Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
昨日の夕方から、彼女は佃と会わなかった。今夜は彼も来る筈だ。伸子が、大して気もないのに来たのは、彼に会いたいからだとさえ云えた。
大方待ちくたびれかけた時、伸子は思いがけなく、期待したとはまるで反対の方角に、佃の姿を認めた。彼は、奥の男子控室のすぐ前で、玄関の方に向いて立ち、比律賓の青年と話している。話しながら、彼もちょいちょい外を気にしている様子であった。青年と別れ、彼は、癖のある歩き方で伸子の方へ来た。彼はまだ、伸子が、一団の人のかげになって、ついそこの椅子にいるとは知らなかった。だんだん近よって、佃がその人むれの向う側を、自分を認めないまま通り過ぎようとした刹那、伸子は我知らず左手で、ミス・プラットの膝に触った。
「ミス・プラット」
声が唇を洩れたと一緒に、伸子は自分の失策に心づいた。何という馬鹿だ! ミス・プラットはもう前から佃を知っていたではないか。彼を見た瞬間、なぜか伸子は、改めてはっきり、
「ミス・プラット、あれが佃さんです」
と、告げ知らせたい烈しい衝動を感じた。考える暇なく、ミス・プラット、と呼びかけたのだ。しかし告げてどうしようと云うのだったろう。