Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
丁度その夜、船では舞踏会があった。十時過ぎ、伸子は、サロンの手すりから、下で舞踏する人々を見下していた。船は盛に揺れた。音楽の間にドドドウと舷を打つ重い濤音とともに、ギギギと船全体を軋ませ、ぐうっと右にロールした。踊り手達は華奢な靴の踵の上で辷った。ずるずる辷りながら、女達は、覚えず対手の男に捉まった。男は脚を踏張って対手を支え、踊りを忘れてどよめいた。不意なその辷りが余興で、そのたびに崩れるような笑い声、陽気な女の叫び、拍手が人々のうちからどっと起った。船内の広間は暖かで華やかで、亢奮している。その浮々した歓楽と、外の暗い冬の海の咆哮とを対照して、伸子は鋭く感じた。
一人のボオイが、その室の入口に現れた。手に紙切を持っていた。夕刻から、返電を心待ちにしていた伸子は、その方へ注意をひかれた。ボオイは暫く踊る人群れの間を縫い、やがて元来たところから外へ出た。手に紙片を持ったままだ。伸子は手すりにそった低い椅子の一つから立ち上り、大階段の上まで出て見た。両腕をぶらさげ、歩調に合せて呑気にその腕を、体の前で振りながら階段を登って来たボオイは、そこに佇んでいる伸子を見ると、職業的にかたちを改めた。