Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

「…………」

伸子は何も知らず、その日、サンフランシスコに着いていた。

多計代は、黙っている伸子をしげしげ見ながら云った。

「でもまあ、伸ちゃんもよく元通りになれたね、あっちで病気をしたと聞いた時の私の心持ったらなかったよ。あの時は、こちらでも、家じゅう枕を並べている有様でねえ」

多計代は、一寸言葉を途切らせた。

「それにお前……追々話して、お前の考えも聞かなければならないが、ひどい心配をしたよ」

伸子は、顔を赧らめた。

「遠くていろいろはっきりしなかったから」

「それもそうだし、第一佃さんという人のことは、父様から一寸伺って知っているだけじゃあないか。それもああいう人のいい方のおっしゃることだから当にはならず、妙なことを聞くしさ。――どっちみち帰ったら判ると思って、本当に、私は待ちかねたよ」

母の調子は慈愛深く、恨みながら許している暖かさがこもっていた。伸子は、初めて自分が想像していたとは全く違う意味で待たれていたのを知った。何だか家の気分が、自分の心持としっくりしなかった理由が氷解した。それと同時に、いままで、幾分神経的な鋭さで緊張していた伸子は、親の温情が湯のように自分を囲むのを感じた。