Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女は、帯や着物をきしませながら、あぐらをかいている佃の上にこごみかかって頬を触れた。

「今夜は父様もお留守だから、ゆっくり母様と話でもしていらっしゃい」

夜に入って、細雨が降り始めた。九時頃になると、家のことを思い、落着けなくなった伸子は、俥を命じて貰った。晩春のしとしと雨で、俥の中は湿っぽく、生暖かいいきれと幌の匂いとがした。それに、登りの坂が多く、手間どった。帰って見ると、玄関にはまだ靴が見えなかった。

「父様は?」

「まだお帰り遊ばしません」

奥へ歩きながら、伸子は、どうか母と佃とが睦じく話しこんでいる光景に出会いたいものだ、と思った。戸をあける拍子に、愉快そうな二人の顔が自分に振り向き、

「おや、お帰り!――今お前の悪くちを云っていたところだよ」

とでも云われたら、どんなに楽しいことであろう! 本当に、どんなに楽しいことであろう! 暗い廊下で、伸子はひとりでに微笑しかけた。しかしその暖かい想像は忽ちかじかんだ。――人間は、自分が棲息する家の空気に対して、獣が巣の安全、或は近づいた危険を本能的に嗅ぎ分けると同じような直覚を持っている。伸子は部屋部屋の鎮まりかえった調子、何処からか流れ出て、廊下にさえ感じられる冷やかさに、用心を感じた。