Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
それでなく誰が素性も知れず、背景もない佃に、そんな好意をしめすものか」
伸子は、十のものなら、大きな声でこれは十だよ、十だからそのつもりでお受取り、と繰り返し云ってからでなければ、十の親切を与えられないような母の性格を情なく感じた。あまりその声が大きいのでつい、ええ何だ! と思ってしまう。今も、苦々しい気持で、伸子は母の言葉に沈黙で答えた。
「世間に対してだって、佐々姓を名乗れば、どこの誰だか知れもしない佃でいるより、どんなに重味が増すか知れやしない。そうでもしたら、ちっとはあのひとの値打ちも出るだろう」
伸子は、むらむらとし、
「そんな値うちなんぞ、つかなくたっていいわ」
荒っぽく云った。
「佃は佃で結構よ――人間の値うちなんて――そんなことで左右されないものよ」
「お前は今目が眩んでいるからね、さぞ立派な佃に見えるだろうが」
多計代は、刺すように、ゆっくり云った。
「そうでもしなければ、少し極りのわるい御仁体だよ」
「極りのわるい人なら人でいいのよ。そんな――養子にするなんて……」
佃と自分に与えられた屈辱の感じで、伸子は顔が赧くなるようであった。彼女は、幾らか心を鎮め、母に説明するように云った。