Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
二軒長屋のような構造で、伸子の住居と隣家とは、羽目板一枚でぴったりついていた。まだ顔を合せたことはないが、その家には中国人一家が、日本人の家族と暮していた。男の子に(中国人の)湯を使わせているらしく、バシャバシャ水の音がした。
「坊ちゃん! さ、いいお子、ね」
日本の、家事をとり扱っている女の声が表面は優しく、しかし腹では焦々しているらしい情なさで聞える。何とか、遠慮がちな中国語で、母親が息子に云いきかせるのも聞えてくる。伸子は、自分の掻き鳴らす楽器の音の単調さを意識した。あの中国語もいやにおとなし過ぎる――いよいよ燦き射りつける西日につれ、伸子は目的のわからない憂愁に捕われた。――捕われたと云っては当らない、西日があまりきついので、伸子の内心から憂愁が蒸発するとでも云うようだ。
別に家も持ち、佃は職業を得、先ずこれで自分らの生活が予定通りはじまっているというわけだが――伸子は、しかし、何だかその生活に、自分を馴らしてしまうことができずにいるのであった。例えばある一つの晩餐会がここにある。料理は勿論、金縁の献立通りに燕尾服の給仕によって運ばれている。