Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
このこだわりなさ! こんな自由の豊富さ! この、力が漲って来る洋々とした心持。――
沿線の風景は、伸子にとって、子供の時から知己であった。列車は那須野ヶ原にさしかかった。一面若葉をつけた矮樹林の間を、汽車は走った。それらは、緑の波のように、列車の左右で泡立ち戦いだ。大気の澄んだ地平線の彼方には、日光の山々が、巓の雪を燦かせて、聳え立っている。若し人があたりにいなければ、心をこめて両腕をこの山々に向って延したいほど感動を覚えた。彼女は、再び自分に還る生活を感じ、勇しく疾び駈ける馬に立ち騎りでもしているように、しっかり、窓に向って両脚で突っ立って、遠い遠い山巓を眺めていると、車体の揺れと自然との交感が音波のように錯綜して、伸子の全身に音楽的リズムがこみ上げて来た。
シュッ、シュッ、カ、カ、
(しかし、彼の山々は――)、いきなり、畳句が記憶の底から浮み出て、その後にとびついた。
シュッ、シュッ、カ、カ、――しかし彼の山々は――
シュッ、シュッ、カ、カ、――しかし彼の山々は――
――彼の山々は――
伸子は、自分の亢奮に驚いた。自分はこのように野原や山々へのノスタルジアにかかっていたのだろうか? そして、また何と貪慾に、自分は自分の自由を享楽していることであろう。